住宅ローン控除の令和6年度改正はこれがポイント!
2024/07/22
令和6年度の予算案において、住宅ローン控除の改正が発表されました。今回の改正には、いくつかのポイントがあります。住宅ローンを考えている方や既に住宅ローンを組んでいる方は、改正内容をしっかりと把握しておくことが重要です。令和6年度税制改正による住宅ローン控除の改正のポイントについて解説します。
目次
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、住宅をローンで取得した場合に減税される制度です。住宅ローン控除は取得された住宅の省エネ能力によって控除額に差が設けられており、一番省エネ性能の優れている住宅(認定住宅)の場合、最大で年間に35万円の税金が13年間に渡り減税できる制度です。住宅ローンの控除を受けるためには、所得税確定申告書に一定の事項を記載して税務署に提出する必要があります。ただし、この制度はその時点での経済動向や社会情勢で大きく変わることがあり、今後の見通しも注目が必要です。
改正前の住宅ローン控除
改正前の住宅ローン控除は、令和4年度税制改正で改正されました。
もともと、住宅ローン控除というのは、所得税法ではなく租税特別措置法という時限的な法律によって規定されており、その期限が令和3年末となっていたため、これを令和7年末まで4年間延長するとともに、借入限度額及び控除率等の見直しがされました。
住宅の種類 | 居住年 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 |
認定住宅 | 令和4年・令和5年 | 5,000万円 | 0.7% | 13年 |
令和6年・令和7年 | 4,500万円 | |||
ZEH水準 省エネ住宅 |
令和4年・令和5年 | 4,500万円 | ||
令和6年・令和7年 | 3,500万円 | |||
省エネ基準 適合住宅 |
令和4年・令和5年 | 4,000万円 | ||
令和6年・令和7年 | 3,000万円 | |||
その他の 新築住宅 |
令和4年・令和5年 | 3,000万円 | ||
令和6年・令和7年 | 2,000万円 | 10年 |
ちなみに、改正前と比較すると、控除率が一律1%から0.7%に引き下げられ、また、控除を受けられる所得要件も3,000万円から2,000万円へと引き下げられています。
また、上記表を見るとお分かりのとおり、令和6年・令和7年の借入限度額は、令和4年・令和5年に比べてそれぞれ引き下げられています。
さらに、登記簿上の建築日付が令和6年7月1日以降の建物で、省エネ基準を満たしていないものについては、適用から除外されています。
令和6年度の改正ポイントは?
今回令和6年度の税制改正では、子育て世帯等に対して住宅ローン控除が拡充されました。
具体的には、「子育て世帯」及び「若者夫婦世帯」に該当する方が省エネ基準適合住宅である認定住宅を取得された場合は500万円、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅を取得された場合は1,000万円が上乗せされることとなりました。
また、住宅ローン控除の適用を受けることができる家屋の床面積は、50㎡以上であることが必要ですが、子育て世帯で所得金額が1,000万円以下の方は40㎡以上でも適用されることとなりました。
なお、「子育て世帯」とは、19歳未満の子を有する世帯を指し、「若者夫婦世帯」とは夫婦のいずれかが40歳未満の世帯を指します。
つまり、ご自身が「子育て世帯」もしくは「若者夫婦世帯」に該当する場合の住宅ローン控除は、以下のとおりとなります。
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除率 | 控除期間 | |
長期優良住宅 | 4,500万円⇒5,000万円 | 0.7% | 13年 | |
ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円⇒4,500万円 | |||
省エネ基準適合住宅 | 3,000万円⇒4,000万円 |
改正の背景及び注意する事項
今回の改正の背景にあるものは、日本が直面している少子高齢化の進行に歯止めをかけ、若い夫婦が安心して子供を産み育てる環境を作りたいと政府が考えているからだと思います。
また、最近の住宅事情を見ると、先日の報道で東京都のマンションの平均価格が1億円を突破するなど、特に都心部などの大都市圏内では、住宅価格が高騰しており、若い夫婦が住宅を購入することが大変なようです。そこで、こういった社会情勢にも対応するため、控除限度額を引き上げ住宅の取得、さらには子育てを税制面から支援していく意図がくみ取れます。
なお、先ほども若干説明しましたが、令和6年以降は省エネ基準適合住宅以外の住宅を取得した場合は、原則として住宅ローン控除が受けられなくなりました。
大手のハウスメーカーが手掛ける物件は、令和6年以降に建築するものは全て省エネ基準に適合しているそうなので心配はないと思いますが、地域の工務店などへ工事を依頼される場合は、省エネ基準に適合しているか確認を行った方が良いと思います。
正しい知識で賢い選択を
住宅ローン控除など、私たちの生活に影響が大きい制度は、その時々の経済や社会情勢で取扱いが大きく変わることがあり、それをきちんと理解して適切な対応を取ることが大切です。
なお、今回のコラムでは触れていませんが、子育て世帯が一定の子育て対応改修工事を行った場合には、ローンを組んでいなくても一定の税額を控除できる制度もあります。
また、住宅の取得は、計画から取得までに一定の時間を要するものであることから、時間軸を意識して計画的な取得を行うことが理想です。
今回の改正で「子育て世帯」「若者夫婦世帯」という概念が新たに出てきましたので、ご自身が現在あるいは将来これらの世帯に該当する可能性があるのかどうかも購入時に検討されることをお勧めします。
判断に迷われることがありましたら、税のプロである税理士にご相談されることをお勧めいたします。