島村智士税理士事務所

【解説】音楽関連会社「のほほん」社に対する追徴課税─節税スキーム認定と「行為計算否認」とは?

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【解説】音楽関連会社「のほほん」社に対する追徴課税─節税スキーム認定と「行為計算否認」とは?

【解説】音楽関連会社「のほほん」社に対する追徴課税─節税スキーム認定と「行為計算否認」とは?

2026/10/05

 

2026年10月8日付の新聞各紙で、人気バンド「サザンオールスターズ」のメンバー関口和之氏が代表を務める音楽関連会社「のほほん」社に対し、東京国税局が約5億8,000万円の申告漏れを指摘し、節税スキームを認定したとの報道がありました。

今回の事案は、一般の方には少し分かりづらい内容ですが、税務の基本的な考え方を理解するうえで非常に示唆に富むものです。本稿では、①事案の概要、②何が「節税スキーム」と判断されたのか、③法人税法の「行為計算否認」とは何か、を分かりやすく解説します。

 

①  事案の概要(何が起きたのか)

 報道によると、「のほほん」社は2021年、当時の顧問税理士法人が用意した別会社の株式を約5億8,800万円で取得しました。 その後、この会社から多額の配当(約470万円ではなく約4700万円規模と報道により異なるが、いずれにせよ大口配当)を受け、株式の価値が大きく下がった段階で、その株式を150万円で関口氏個人に売却しました。

 この結果、取得額(約5億8,800万円)−売却額(150万円)=約5億8,650万円という巨額の「損失」が会社の帳簿上生じることになり、法人税の課税所得が大幅に圧縮されました。

 東京国税局は、この一連の取引が「不当に税負担を軽減する目的で行われた」と判断し、2023年9月期までの3年間で約5億8,000万円の申告漏れを指摘。追徴税額は約5,300万円とされています。

 

②  何が「節税スキーム」と判断されたのか

 今回の取引のポイントは次の3点です。

  • 実質的な資金移動がほとんどない

  • 取引の多くが「帳簿上の操作」に近く、実際に会社の経済活動として意味のある資金の動きが乏しいと判断されました。

  • 短期間で巨額の損失を人工的に作り出している

  • 株式を高額で買い、配当で価値を下げ、安値で売却する…この流れは通常の経済合理性に乏しく、「損失を作るための取引」と評価されました。

  • 税負担を不当に軽減する目的が強く疑われる

  • 結果として、会社の利益が大幅に減り、法人税が少なくなる構造になっていました。

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税務では、「形式上は合法に見える取引」であっても、実質的に税負担を不当に減らすためだけに行われた取引は認められません。 今回のケースは、まさにその典型例と判断されたわけです。

 

③  法人税法の「行為計算否認」とは?

 今回、国税当局が適用したのが 法人税法132条「行為計算否認」 と呼ばれる規定です。報道でも「行為計算否認が適用された」と明記されています。

●行為計算否認とは?

 簡単に言うと、会社が“税金を安くするためだけ”に不自然な取引をした場合、税務署はその取引をなかったものとして計算し直すことができる

というルールです。

●なぜこの規定があるのか?

 税務は「形式」よりも「実質」を重視します。 たとえ書類上は正しく見えても、実質的に意味のない取引で税金を減らすことは認められません。

  行為計算否認は、

  • ・取引に経済的合理性がない

  • ・税負担を不当に減らす目的が明らか

  •  という場合に適用されます。

今回の「のほほん」社のケースは、

  • ・実質的な資金移動がほぼない

  • ・短期間で巨額の損失を人工的に作り出している

  • ・税負担を軽減する以外の目的が見えにくい

  • という点から、この規定が適用されたと考えられます。

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◆まとめ

 今回の「のほほん」社の事案は、形式上は合法に見える取引であっても、実質的に税負担を不当に減らす目的で行われた場合は認められないという税務の基本原則を示すものです。

  • ・巨額の損失を人工的に作り出す

  • ・実質的な経済活動が伴わない

  • ・税負担を軽減する以外の目的が乏しい

 こうした取引は「節税」ではなく「租税回避」と判断され、行為計算否認により課税が行われます。

 税務は「形式」より「実質」が重視される──今回の事案はその典型例と言えるでしょう。

 今回の節税スキームを主導したのは税理士で、報道では「経済的な目的に基づく取引であり、節税目的ではない」と主張しているそうですが、これら一連の報道を見る限り税理士の主張には無理があるような気がいたします。

 節税か租税回避か明確な線引きはありませんが、少なくとも僕は自分の良心に従って常識的な判断で行動したいと思っています。

 

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