インボイス登録事業者になるべき?中小企業のための解説
2024/06/24
インボイス制度がスタートして約9カ月が経ちましたが、当事務所のお客様からもインボイスに関する様々なご質問やお問い合わせをお受けすることがございます。
今回は、特に中小の事業者様がよくお寄せいただくインボイスに関する疑問について、簡潔に解説いたします。
目次
インボイス制度についてのおさらい
インボイス制度導入の趣旨について、国税庁の公式見解は「売手が買手に対して正確な適用税率や消費税額を伝えるものです。」とあります。つまり、事業者が取引先から商品を仕入れたり、経費を支払った際に、何パーセントの消費税率(8%or10%)の商品をいくら買って、その内の消費税をいくら支払っているかをインボイスに明記することにより、消費税を正確に「転嫁」していこうとするものです。
ただ、私の個人的見解は、国に入るべき消費税が事業者の手元に残ってしまう状況(いわゆる「益税問題」と言われているものです。)を改善し、消費者が支払った消費税をきちんと回収したいということが背景にあると思っています。
なお、事業者の方が行う消費税の計算の仕組みというのは、簡単に言うと(売上げに含まれている消費税)ー(仕入れや経費に含まれている消費税)ということになります。この「仕入れや経費に含まれている消費税)の金額を、インボイスから抽出して計算することになります。
「インボイス登録事業者」とは?
「仕入れや経費に含まれている消費税をインボイスにより確認する。」と説明しましたが、その際のインボイスというのは、誰でも発行できる訳ではありません。事業者がインボイスを発行するためには、事前に国に申請を行い、「インボイス登録事業者」となることが必要です。申請を行うと国から「T+13桁の番号」のインボイス番号が通知されますので、この番号をインボイスに記載しておくことが必要になります。
つまり、「インボイス登録事業者」が発行したインボイスがなければ仕入れや経費に含まれている消費税を売上げに含まれている消費税から差し引くことができない、ということになります。
また、「インボイス登録事業者」には消費税の申告納税の義務が生じます。現在の法律(消費税法)では、消費税を納める必要のある方は、「2年前の売上金額が1千万円を超える方」とされているため、2年前の売上げが1千万円以下の方は本来は消費税を納める義務はありません(この方は「免税事業者」といいます。)
ところが、このような免税事業者の方であっても、インボイス登録事業者となることを選択された場合は、消費税を払わなければならなくなります。
インボイス登録事業者になるべきか、ならないべきか
まず、現時点で消費税の納税をされている方(2年前の売上げが1千万円を超えている方)は、インボイス登録事業者になるべきだと思います。取引相手がインボイス登録事業者かそうでないかは、取引先(特に売上先)の消費税の計算に影響があるため、取引先はインボイスを発行してもらいたいでしょうし、発行する側にとっても、インボイスを発行するデメリットは無いと言っても問題ないと思います。
問題は、元々は免税事業者であった方で、当事務所にも「免税事業者だけど、インボイスの登録はしないといけませんか?」というご質問を多くいただきます。
結論を先に申し上げますと、「取引先(特に売上先)とよく相談した上でインボイス登録をするか判断した方がいい」となります。仮にあなたが免税事業者でインボイス登録事業者ではない場合であっても、消費税を含めて売上代金を請求することは何ら問題がありません。
しかし、売上先である取引先は、あなたへ支払った消費税を原則自分(取引先)の納める消費税が差し引けないということになる(つまりその分多くの消費税を負担する必要がある)ため、その分の支払い代金の減額を要請する可能性があります。
このあたりは、取引相手とあなたの関係(取引上、どちらが優位な立場なのか)により左右されることが多いと思いますので、登録前に取引先とよくご相談されることをお勧めします。
インボイス制度についてのご相談は、プロの税理士に
以上、インボイス制度について簡単にご説明いたしましたが、実務上は、例えば免税事業者がインボイス登録事業者となり消費税の申告と納税をされる場合は、個人事業者の場合は令和8年分まで、法人事業者の場合は令和8年9月末決算期までは、納める消費税額を売上げに対する消費税額の2割とする特例(いわゆる「2割特例」)を受けることができたり、取引先についても、仮に取引相手がインボイス登録事業者でなくても、当面は支払った消費税額の8割を引くことができる特例があったりしますので、これらの特例も考慮して判断する必要があります。
そういった点も踏まえて、インボイス制度にどのように対応するかをお悩みの方は、税のプロである税理士にご相談されることをお勧めします。
インボイスについてのご相談は、島村税理士事務所にお任せください。
島村税理士事務所では、消費税やインボイス制度に関するご相談に税務署経験40年余りの経験を生かし、親切丁寧に対応をいたします。
特に、例えば個人でご商売を始められたばかりの方や新しく会社を立ち上げた方など、本来は免税事業者である方々が消費税をどうするべきかなどのご相談も、喜んでお引き受けいたします。
ご商売をされいる方のみならず、例えば不動産所得などがある方にとっても消費税は避けて通れないものであり、判断を誤ると想像以上に高額な納税義務が生じる可能性があります。
巷に溢れている情報や同業者間の噂話が全て正しい訳ではありません。
不安を抱えておられる方は、ぜひお気軽に当事務所へご連絡ください。
初回相談料は無料です。よろしくお願いいたします。