専従者給与を支給している方はご注意を(定額減税補足給付金制度)
2024/07/08
令和6年度税制改正で、「所得税・個人住民税の定額減税」が本年度限りの制度として措置されました。
この制度は、「個人で令和6年分の所得金額が1,805万円以下の方及びその方の配偶者を含めた扶養親族1人につき、所得税3万円、個人住民税1万円の減税を令和6年6月以降速やかに実施する。」というものです。
これにより、サラリーマンの方は先月分の給料から差し引かれている源泉徴収税から定額減税分の税金を差し引かれたものが支給されていると思います。
なお、先月の給料やボーナスから引ききれなかった場合は、今月以降の給料から不足分を順次控除することとされています。
また、個人事業主の方については、来年の確定申告の際に定額減税額を申告書に記載して減税することになります。
一方、元々の納税額が定額減税額に満たない方については、差額を自治体が給付金という形で支給(調整給付)することになっています。
この調整給付については、各自治体が令和5年分(つまり去年)の所得金額を基にして算定します。
つまり、定額減税は令和6年分(つまり今年)の所得税額を減税する制度であるにもかかわらず、調整給付の計算は前年の所得税額を根拠に計算するということです。
そうすると、令和6年分の所得税が令和5年分と比べて変動した場合はどうなるのでしょう?
例えば・・・
① 令和5年分に比べて令和6年分の所得金額が減少したことにより、令和6年分は調整給付を受けることとな、又は調整給付額に不足が生じる方
② 子供の出生等により、令和6年中に扶養親族が増加したことにより、令和6年分は調整給付を受けることとなる、又は調整給付額に不足が生じる方
この場合は、令和7年1月以降に自治体が給付金を再計算し、不足額を追加給付(不足額給付)を行うこととされています。
なお、上記①や②の事情による場合は、自治体が対象者を特定し給付手続きを行う(支給確認書方式・お知らせ方式)予定です。
問題は、自治体が把握できない給付対象者が存在するということです。
今回の制度では、次の要件に該当する方は給付金を受給できるにもかかわらず、自治体では把握ができない方になります。
① 所得税及び個人住民税所得割ともに定額減税額がゼロの方
② 税制上の扶養親族からは外れている方
③ 低所得世帯向け給付の対象となっていない方
例えば、個人事業を営んでいるAさんが、妻のBさんを事業専従者として60万円の専従者給与を支給しているとすると・・・
① Bさんには所得税も住民税所得割も課税されていない
② 税制上、事業専従者であるBさんはAさんの扶養親族になれない
③ Aさんは、低所得背板向けの給付対象者とはなっていない
ということになり、この場合、Aさんの定額減税対象者からBさんは外れるため、Bさんは調整給付の受給対象者となります。
ところが、自治体ではBさんが給付対象者であることが把握できないため、このような場合、Bさんは自治体に対して個別に給付の申請を行わなければ給付を受けることができません。
個人事業者で、比較的少額な専従者給与を支給している方は少なくありませんので、気になる方は一度税理士へご相談されることをお勧めします。
今回の定額減税は、来年の申告等で行えば良かったものを無理やり前倒しで実施してしまったために、他にも色々な弊害が指摘されています。
我々実務家としては、決められた法律には従うしかありませんが、納税者の方々に混乱を招くような性急な施策は良くないと個人的には思っています。
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