「年収の壁」はどう改正されたのでしょうか?(令和7年度税制改正について解説します)
2025/05/08
皆さんこんにちは。
最近は「令和の米騒動」や「トランプ関税」など経済を巡る話題が連日報道されていますね。
今年の春闘では多くの企業が賃上げを実施しているそうですが、物価の上昇に追いついておらず、賃上げの効果はなかなか実感できないと思います。
ところで、先般の国会では令和7年度の所得税法の改正が可決され、いわゆる「年収の壁」の見直しが行われました。
「年収の壁」というのは、年収がある一定を超えると税金や社会保険料の支払義務が生じてしまい、結果として手取り額が減少することもあるため、学生さんやパート勤務の方は、限度額を超えないよう仕事をセーブせざるを得ない状況のことを指します。
皆さんよくご存知の「103万円の壁」というのは、パート勤務の方が受け取る給料に対して所得税の納税が発生するラインが年収103万円ということです。
具体的には、パートの場合、受け取る給料には55万円の「給与所得控除」が最低保証額として認められており、併せて皆さん一人一人に48万円の「基礎控除」があるため、これを合計した金額55万円+48万円=103万円までは所得税の納税義務は生じないということです。
また、この「年収103万円」を超えてしまうと、ご自身の納税義務の問題以外に、親御さんや配偶者の方の扶養控除や配偶者控除が受けれれなくなってしまい、これらの方たちの納税額も増えてしまう可能性があります。例えば、19歳から23歳までのお子様を扶養している場合、その扶養している方については、年間63万円の扶養控除(特定扶養控除)が認められていますが、もし、その子が103万円を1円でもオーバーしてしまうと、扶養控除の63万円は全額控除できなくなってしまうため、数万円の税負担が生じてしまうことになります。
前置きが長くなってしまいましたが、今回の税制改正では、この「年収の壁」を見直す議論が行われています。
ただ、今回の税制改正で見直された内容は、専門家である我々が見ても非常に分かりにくいものになっています。
全てを解説すると、かえって混乱すると思いますので、今回は学生バイトやパート勤務の方(年収200万円以内の方)を対象に改正のポイントについてできるだけ簡潔に説明したいと思います。
・改正のポイント①…所得税のかからない範囲が拡大されました。
これまで、「年収103万円」であった所得税の課税最低限の金額が、今回の改正で「年収160万円」まで引き上げられました。
これは、今回の改正で給与所得控除が10万円、基礎控除が47万円それぞれ引き上げられたことによります。
これにより、パートやアルバイトをされている方は、給与所得控除(65万円)+基礎控除(95万円)=160万円まで税金がかからなくなりました。
ただし、年収が200万円を超えている場合は、基礎控除の金額が少しづつ減少しますので、注意してください。
・改正のポイント②…特定親族特別控除という控除が新たに設けられました。
今まで、学生(19歳~23歳)を扶養している場合、扶養している人は特定扶養親族として63万円の扶養控除が認められていましたが、その扶養者の年収が少しでも超過してしまうと、扶養控除全額が認められていませんでした。
今回の改正で、特定扶養親族の控除額は、その扶養している人の年収(所得金額)に応じて最大63万円から段階的に減少していくことになりました。
親御さんの税金の負担が急激に増えることを心配していた方にとっては朗報と言えると思います。
・注意していただきたい事項
今回の改正により、アルバイトやパートで働く方の税金がかからない金額(範囲)と、これらの方を扶養している方が扶養にできる金額(範囲)が一致しなくなったということです。
よく分からないと思いますので、パートさん(A子さん)を例に説明します。
A子さんが受け取る給料については、上記①で説明したとおり、年収160万円までA子さんご自身に所得税の課税は発生しません。
ただ、仮にA子さんが配偶者の扶養親族になれるかどうかの判断は、A子さんの所得金額が58万円を下回っている必要があります。
つまり、改正後の給与所得控除(65万円)+扶養控除の所得限度額(58万円)=123万円以下の年収である必要があります。
そうすると、仮にA子さんの給料が123万円から160万円の間だった場合は、A子さん自身の納税は必要ないものの、配偶者の所得控除(配偶者控除)は受けられなくなりますので、配偶者の税負担が発生する可能性があります。
また、今回の改正は、令和7年分以後の所得税について適用されますが、源泉徴収は令和8年1月1日以降に支払う給料から適用されることになっており、令和7年分についは源泉徴収は今までと同じ金額で行われ、年末調整で精算をすることになります。
なお、今回の解説では触れていませんが、基礎控除は、年収で200万円以上の方は、その収入金額に応じて減額(88万⇒68万⇒63万⇒58万)される仕組みとなっています。
この文章を読んでも、なかなか制度を理解できる方は少ないかもしれません。
気になる方は、専門家である税理士へご相談されることをお勧めいたします。
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